最終更新日 2025年3月27日 by edgea
1.雛人形を飾る意味
3月3日のひな祭りには、雛人形を飾ってお祝いをします。
ひな人形には生まれた女児が健康に育つようにという親の願いが込められています。
赤ちゃんが生まれて初めての節句が初節句です。
女児の場合は3月3日が桃の節句になり、男児の場合は5月5日が端午の節句になります。
桃の節句は中国の漢の時代の習わしが起源といわれています。
3人の女児が生まれたものの3人とも亡くなった男性がいて、嘆き悲しむ男性を見て村の人々がお酒で亡骸を清め水葬したのが由来になります。
この習わしが日本に伝わり平安時代になると3月3日にお祓いをするようになります。
紙の人形を川に流した厄払いは、形を変えて現在でも下鴨神社で行われています。
紙の人形が発展して現在の豪華な雛人形になりましたが、ひな壇を飾るようになったのは江戸の中期からです。
それまでは畳に敷物を敷いて人形や調度品を飾っていましたが、富裕層では徐々に美しいひな壇が飾られるようになります。
最初は貴族の習慣でしたが、武士や一般庶民にも広がり全国的に普及していきます。
京都のひな祭りでは赤や白、緑などのカラフルな生菓子が出されます。
この菓子は阿古屋貝を模した菓子で、子宝に恵まれるようにという願いが込められています。
全国的に普及している菱餅は5色のお餅ですが、3色の菱餅もあります。
2.日本人にとって弥生の月は農耕作業がスタートする重要な季節
3月は弥生の月ですが、日本人にとって弥生の月は農耕作業がスタートする重要な季節です。
鳥取で行われる流し雛も有名で、3月になると日本全国で様々なイベントが行われます。
宮中や公家の間では人形は男女一対の形になっていましたが、江戸時代の中期になると武家や町人の家では壇飾りが流行します。
上方と江戸では雛人形の飾り方は異なります。
上方の場合は御殿内に雛を一対置いて官女や左大臣、右大臣などを置きます。
座敷には市松人形や御所人形などの調度品を並べます。
江戸の場合は最上段に内裏雛を飾る方法で、明治以降になるとこの方法が全国的に普及することになります。
もともとは向かって右側に位の高い方を飾っていたので、向かって右が男雛で左が女雛になります。
この飾り方が変化するのは大正から昭和の初期にかけてです。
向かって右側に女雛を飾り、向かって左側には男雛を飾るようになり今日に至ります。
江戸後期になると可愛い五人囃子も加わりますが、五人囃子は能の囃子方がモデルになっています。
人形の美しさの裏には職人の高度な技術があります。
3.中央は三宝を持たせるケースもある
一番上の段はお内裏様と呼ばれるお殿様とお姫様を置きます。
上から二段目は三人官女になります。
三人官女はお祝いに飲むための白酒を持って使えています。
両脇の官女は立ち姿で、真ん中にいる官女はすわり姿になります。
中央には松竹梅の飾りを付けている置物がありますが、この置物の代わりに三宝を持たせるケースもあります。
上から三段目が五人囃子になり、楽器は打楽器に笛が加わった能楽の囃子です。
一番左が太鼓で、鳴り物が大きな順に並んでいます。
上から四段目は右大臣と左大臣が並びます。
右大臣も左大臣も家と人を守り、文武両道に長けています。
一般的に老人と若者で一組になります。
老人の左大臣は学問と知性の持ち主として知られ、向かって右側に座ります。
右大臣は若さ溢れる力を誇示しています。
嫁入り道具などが付く七段飾りになると、さらに豪華さが増します。
五段目には御所の桜や右近の橋が模写されています。
4.室町時代のひな祭りは女児だけではなく大人の女性も遊んでいる
向かって右側に桜の木があり、左側には黄色の実をつけている橘の木が置かれます。
六段目には箪笥や鏡台、茶の湯道具が置かれ七段目には重箱や御所車を配します。
お雛様が納められている箱にはお祝いをする女児の名前や生年月日を書くのが一般的です。
昔は女児を祝う際に桃の花や白酒、草もちを備えて家族や親族などで会食を行っています。
農耕仕事が忙しくなる前に行った行事が3月にあったことから、ひな祭りのお祝いも広く普及することになります。
白酒は室町時代からの供え物です。
室町時代のひな祭りは女児だけのお祭りではなく、大人の女性も雛人形で遊んでいます。
女児も大人の女性も一緒になって雛を流し、大人は白酒をかわしながら楽しく過ごしたことが記録にあります。
白酒は古事記の頃から邪気を払う力があると伝えられています。
桃の花びらを白酒に浮かべて飲むと、縁起が良いとされます。
赤と白の二重重ねの丸餅は太陽と月を象徴しています。
高杯は官女の間に置いて、祝いの丸餅を備えます。
都会ではひな祭りが簡略化されるケースが増えていますが、地方では家族や親戚を集めて盛大にお祝いをするケースがまだ多いです。
結婚して家庭を持ち、自宅に初めて雛人形を飾る場合は安全な場所を第一に考えます。
スペースの問題で床の間に人形を飾る場合は、高さの調節をしてから飾ると美しく飾ることができます。
飾った人形を収納する場合は、写真を撮っておくと次に飾るときにスムーズに飾れます。
雛人形は繊細な人形なので、型くずれに注意して丁寧に保管します。